新編武蔵風土記稿は徳川幕府編纂の武蔵国(現在の東京都・埼玉県と神奈川県の一部)の地誌。ここでは、『昭和改修版』を底本とした。

   杉山村(すぎやまむら)(現・埼玉県比企郡嵐山町大字杉山)
 
 杉山村ハ郷庄領(ごうしょうりょう)ノ唱(とな)ヘヲ伝(つた)ヘズ。江戸ヨリノ行程(こうてい)前村(ぜんそん)ニ同ジ*1。「家数五十余(あまり)。東ハ広野(ひろの)・太郎丸(たろうまる)ノ二村ニ隣(とな)リ、南ハ志賀村(しかむら)ニテ、西ハ中爪村(なかつめむら)、北ハ越畑村(おっぱたむら)ニ界(さか)ヘリ。東西八町(はっちょう)*2許(ばか)リ南北十八町、水損(すいそん)*3ノ地ナレド用水(ようすい)*4便(べん)アシケレバ天水(てんすい)ヲモ仰(あお)ゲリ。御打入(おんうちいり)*5ノ後ハ森川金右衛門氏俊(もりかわきんえもんうじとし)ニ賜(たまわ)リ、今モ子孫(しそん)美濃守(みののかみ)知行(ちぎょう)*6セリ。検地*7ハ慶長二年(けいちょう)(1597)、時の地頭(じとう)*8森川金右衛門糺(ただ)セシト云フ。
   *1:中爪村と同じく、「江戸ヨリ拾六里」。
   *2:1町は約109メートル。
   *3:水害。
   *4:農業用水。
   *5:1590年(天正18)、徳川家康が江戸城に入城したこと。関東御入国。
   *6:領地を支配する。
   *7:土地の面積やその土地からの収穫量、生産高などを調査すること。
   *8:領主。

 高札場(こうさつば)*1 村ノ中程(なかほど)ニアリ。
   *1:禁令や法令を板書し、庶民に周知するよう掲示した場所。

 小名(こな) 堰口(せきくち) 川袋(かわぶくろ)

 市ノ川(いちのかわ) 村ノ南ヲ流ル、川幅(かわはば)三間(さんげん)*1
   *1:1間は約1.8メートル。

 八宮社(やみやしゃ) 村ノ鎮守(ちんじゅ)ナリ。相伝(あいつた)フ古(いにしえ)ハ八王子権現(はちおうじごんげん)*1ヲ勧請(かんじょう)*2セシ社(やしろ)ナリシガ、何(いずれ)ノ頃(ころ)ニヤ八宮明神(やみやみょうじん)ニ改号(かいごう)アリシト云フ。
   *1:近江国牛尾山(八王子山の山岳信仰と天台宗・山王神道が融合した神仏習合の神。日吉山王権現もしくは牛頭天王(ごずてんのう)の眷属(けんぞく)ある8人の王子を祀った。
   *2:神仏の分身・分霊(ぶんれい)を他の地に移して祭ること

 天神社(てんじんじゃ)*1
   *1:菅原道真(すがわらみちざね)の霊(れい)を祀った神社。

 稲荷社(いなりしゃ)*1 以上三社共ニ大蔵院持
   *1:五穀豊穣の神を祀る。

 積善寺(しゃくぜんじ) 天台宗*1、男衾郡(おぶすまぐん)塚田村普光寺(ふこうじ)ノ末(まつ)、福王山泉明院(せんみょういん)ト号(ごう)ス。開山(かいさん)祐源(ゆうげん)、天正元年(1573)二月十六日示寂ス(じじゃく)*2。本尊(ほんぞん)弥陀(みだ)*3ヲ安(あん)*4セリ。  
 鐘楼(しょうろう) 延享三年(えんきょう)(1746)十二月鋳造(ちゅうぞう)ノ鐘(かね)ヲカク。
   *1:平安時代に中国で学んだ最澄(さいちょう)が、帰国して比叡山に延暦寺をつくり、新しく開いた仏教の宗派。空海の開いた真言宗とともに平安仏教の中心になった。
   *2:高僧が死ぬこと。
   *3:阿弥陀如来。
   *4:安置する。

大蔵院(だいぞういん) 本山修験(ほんざんしゅげん)*1男衾郡(おぶすまぐん)板井村(いたいむら)長命寺(ちょうめいじ)配下(はいか)、開山ヲ光勝(こうしょう)ト云ヒ、寂年(じゃくねん)*2ハ失(しつ)セリ。中興開山(ちゅうこうかいざん)*3清尊(せいそん)、慶長二年(けいちょう)(1597)十一月五日示寂(じじゃく)ス。不動(ふどう)*4ヲ安(あん)ス。
   *1:京都の聖護院(しょうごいん)を本山とする本山派修験道のこと。修験道は日本固有の山岳信仰に根ざし、密教(みっきょう)の影響(えいきょう)を受けて形成された宗教の一派。
   *2:死亡した年。
   *3:寺を再興した僧侶。
   *4:不動明王。

薬師堂(やくしどう)*1 村持(むらもち)。
   *1:病気を治す薬師如来を祭る。

塁蹟(るいせき)*1 村ノ中程ニテ小高キ丘ノ上千五百坪(つぼ)許リノ地ヲ云フ。一説ニ往昔(おうせき)*2金子十郎家忠(かねこじゅうろういえただ)ノ居住ナリシトイヘドモ詳(つまびらか)ナラズ。又ノ伝ヘニ中古(ちゅうこ)上田氏ノ臣ニテ庄主水(しょうもんど)(或ハ杉山主水トモ)ト云フ者住(じゅう)セシ所トモ云(い)エリ。按(あん)ニ*3隣村越畑村(おっぱたむら)ニモ庄主水ガ居住ノ地アリ。是(これ)当国(とうこく)七党(しちとう)*4ノ内、児玉党(こだまとう)ノ庄権頭広高(しょうごんのかしらひろたか)・庄太郎家長(しょうたろういえなが)等が子孫ナドニヤ、又北条*5家人ニモ庄式部少輔(しょうしきぶしょうすけ)・庄新四郎(しょうしんしろう)ノ名見エタリ。若(もし)クハ是等(これら)ノ一族(いちぞく)ナラン。
   *1:砦(とりで)の跡。
   *2:昔。
   *3:考えるに。
   *4:平安時代末期から鎌倉・室町時代にかけて存在した武蔵国の同族的武士団の武蔵七党のこと。
   *5:小田原の後北条氏。

■八宮神社の棟札など■
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